【NHKオンデマンド】「妻たちの新幹線」

あなたは新幹線がない世界を想像できるでしょうか?
生み出されたものがあるならば、そこにはつくった人たちがいます。

5月20日鉄道王(RAILKING)はグランドオープンします。
この日は新幹線を作った男と呼ばれる技術者、島秀雄さんの生誕日です。
島秀雄さんへの敬愛を込めて、こちらの作品をご紹介します。

「妻たちの新幹線」
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あらすじ
「超特急」という夢を支えた絆の物語。新幹線を作った男と呼ばれる技術者、島秀雄。そして剛腕の情熱家、第4代国鉄総裁の十河信二。この二人なくして東海道新幹線は実現できなかった。しかし、この二人には陰で支えた妻たちがいた。高度経済成長を支えた鉄道マンの生きざまを熱く描きながら、島の妻・豊子を語り部に、昭和を走り抜けた技術者の魂とそれを支えた夫婦・家族を描く涙と感動の物語。 

出演:中村雅俊、南果歩、溝端淳平、真野恵里菜、伊東四朗、加賀まりこ、田辺誠一、中原丈雄 ほか

 

昭和39年の東京オリンピックまでに完成させるとの強い思いで、新幹線開発に挑む技術者(“汽車屋”)たちと、その家族の絆を浮き彫りにしたドラマです。
膨大な予算の獲得に苦労し、また三河島事故という惨事による非難を浴びながらもけして夢をあきらめなかった人々。 

彼らの夢は、昭和30年10月、十河が島に言ったこんな一言からはじまる。

「新幹線を、日本の未来をつくってほしい!」

それに対し「まず家内に相談させてほしい」と答える島。
だが、相談を受けた妻・豊子は「もう国鉄に戻る覚悟ができてるんでしょ。わかりますよ。私、汽車屋の女房ですもの」とあっけらかんと笑うのだった。

 

また十河の妻・キクも病気に苦しみながらも夫のことだけを思い島に頭を下げる。「どうか十河のことをよろしくお願いします。口は悪いですがそれも全て国鉄を思うが故なんです。どうぞ、どうぞ、よろしくお願いします」
「わかってますよ。大丈夫です」(島)
その言葉にホッとし笑顔をこぼすキク。
十河は妻が病気になった後、苦労をかけたと後悔の念を抱くが、それでも強い決意で前を向いていこうとする。

「俺は線路を枕に討ち死にする覚悟で総裁を引き受けたのだ。国家のため、国鉄のため、やるしかないんだよ」

 

世界銀行からの借款(しゃっかん)により開発がやっと順調に進み始めた矢先、昭和37年、三河島の多重事故が起こる。葬儀に参列し、弔いの意を表す十河に向かい罵声が飛ぶ。

「それで死人が戻ってくるか!」

深く頭を下げる十河。
十河はひと月近くかけて犠牲者の家を一軒一軒訪ねてまわる。周りからは「新幹線なんてのんきなことやってるからこんなことになるんだ」という声があがり新幹線計画は白紙になるかもしれない危機を迎える。
だが、そんな中でもひたすらに開発に向き合う島。
そしてそれを支える家族や汽車屋たち。

父の強引なやり方に当時、現場にいた息子・隆は「このままでは新幹線より先に人が故障しますよ。あなたらしくないやり方だ」と苦言を呈す。
その言葉に、
「辞めない。父の時代にはできなかった。だが今ならできる。やらなければならない。合理だけでは成し遂げられないものがある。わたしはきっとできると信じているんだ」と熱い思いを返す。
感情を表に出さなかった父の思いの強さにたった一言。「わかりました」(隆)
島も自分の気持ちを受け止めてくれた息子に「ありがとう。お前が現場にいてくれてよかった」と……。

父子の心のやり取りが胸に響きます。

 

昭和37年6月26日公式に試運転が開始されます。
実際に新幹線が走る姿を目の当たりにすると世間ではふたたび新幹線待望論が高まります。三河島事故の遺族団から「事後処理は十河さんにやってほしい」という要望書がだされ池田総裁は「十河は辞任に及ばず」という結論を出す。
同じころ、技術者たちは時速200キロの壁に挑んでいた。

「256キロ。世界最高速度達成です」(島)

 

完成目前に、予算超過の責任をとって十河は国鉄総裁を辞任する。そして彼に乞われて技師長になった島もまた……「技術的にはもう何も心配することはない」と去るのだった。
そんな夫に豊子は「おつかれさまでした」そういって笑いかける。

 

昭和39年10月1日、新幹線開通式典。

東京駅19番線のホームで東海道新幹線出発式典が行われた。
だがその晴れの場に二人が招かれることはなかった。
十河は寂しく自宅で新幹線出発のセレモニーをTVでみつめていた。
島も自宅の2階から新幹線の走る姿を万感の思いをこめ見つめるのだった。 

「新幹線は私が生んだわけじゃない。

現場の創意工夫によって完成したんだ。

人類全体の知見に貢献できた。もう十分、満足だよ」 

 

平成元年のある夜、豊子は家族のための食事の用意をしているときに倒れ、そのまま病院で息を引き取る。
家族全員で亡くなった豊子のつくった夕飯のおかずを回して食べるシーンに涙が止まらない。

最後は豊子のこんな語りでしめくくられる。

「何という幸せでしょう。最期まで家族のためにご飯を作って食べさせることができたなんて……。

十河さんの奥様に会えたならきっと二人でお話しますよ。

わたしたち汽車屋の女房で幸せでしたね」

 

夢を追い続けた汽車屋たちの精神を受け継いで、
今度は2020年の東京オリンピックに向けて、鉄道の発展に期待したいですね。

文:荒木みか
nhk3新幹線づくりに大きく貢献した技師長の島秀雄と、彼を支えた妻・豊子の物語。

「妻たちの新幹線」はNHKオンデマンドからご覧になれます。

 

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