著者に聞く『山手線探偵』の楽しみ方

特別インタビュー
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静岡県出身。1969年6月3日生まれ。ミステリ作家。
第8回「このミステリーがすごい!」大賞隠し玉『死亡フラグが立ちました!』でデビュー。
代表作は『ドS刑事』シリーズ、『山手線探偵』シリーズなど多数。

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【作品紹介】
『山手線探偵』全3 (ポプラ社)
山手線の電車内だけに現れるといわれる神出鬼没の名探偵―─山手線探偵・霧村雨。彼を支えるのは、小学5年生の助手・シホと、見当違いな推理を働かせまくる自称作家の三木幹夫。彼らトンチンカン3人組が、日常の謎から殺人事件まで、どんな事件でも解決します!
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──先生は、もともと鉄道好きでいらっしゃるんですか。

特に鉄道好きではないんです。僕は出身が浜松なんですが、電車を利用することがほとんどなかったんですね。電車の本数は20分に1本とか多い時でも10分に1本くらい。それに路線から離れた場所に住む人はみんな車を使ってましたから。
ただ、家の近くにJR東海浜松工場があったので電車を見慣れてはいました。細長い建物の中で新幹線を整備していたり、ドクターイエローも見ましたよ!
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あとね、高校生の頃に二俣線(現在の天竜浜名湖線)を使っていたんですが、そこでよく覚えていることがあるんです。
三ヶ日という駅で列車が発車した時に、「待って~」と言いながらおばあさんが追って来たんです。そうしたらガッシャンと電車が停まって、なんとバックして駅に戻ったんですよ! 他でやったら新聞沙汰ですよね(笑)。でも心温まるエピソードだったなぁ、と今でも思います。

──ローカル線ならではの素敵なエピソードですね。それでは、『山手線探偵』を書くきっかけは何だったのでしょうか。

山手線を舞台にしたミステリを書いてほしいという依頼があったんです。
僕は、東京に住んでいなかったんで「山手線」っていう名称やぐるぐる回っている電車くらいの知識しかなかったんですよ。当時は中央線とか知らなくて、東京から新宿まで山手線に乗っていたくらいですから。かなり時間がかかるんだなぁ、と(笑)。
地方の人はそういう人が多いんじゃないかな。名前は聞いたことあるけど、ていうね。
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■1巻「まわる各駅停車と消えたチワワの謎」

──「山手線」をテーマにというのはかなり大変だったのではないですか。

そうなんですよ。だから、ちょっと間抜けなエピソードもあるんです。
『山手線探偵』は駅ごとに事件が起きるので目次のタイトルがすべて駅名なんですよ。そこに何を勘違いしたのか「御茶ノ水駅」と書いちゃったんです。
誰も「山手線に御茶ノ水駅はない」と気づかなかったんです!

──では、いつ気づかれたんですか。

表紙をつくった段階でデザイナーの人が指摘してくれたんです。それで急きょ、御茶ノ水駅を違う駅に変えて書き直したんです。
あの時は本当に焦りましたよ(笑)。
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──裏ではそんな事件もあったんですね(笑)。
駅ごとの描写もこの小説の魅力の一つだと思うのですが?

山手線に何度も乗って、気になる駅から順番に降りて取材を綿密にしましたから。
その時に最初に降りたのが「日暮里駅」です。名前の響きが“ナポリ”っぽいからイタリアの雰囲気のある街なのかな? とか期待して降りたんですよ。想像とはまったく違いましたけど(笑)。でも、少し歩いたところにあった谷中銀座商店街がとても素敵で、そこを初めに書いたんです。だから本の中にも最初の方に登場しているんですよ。

──その話にでてくるコロッケがすごくおいしそうで食べたくなりました。 

それは小学生のシホちゃんの目線で語られているから余計にそう感じるのかもしれません。僕の作品の中で子どもが主人公なのはこの本だけなんですよ。大人だと普通のことでも子どもからしたら特別だったり、不思議だったりするので、子どもの視点から電車の中や駅を楽しんでもらうのもいいかなと思います。

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■2巻「まわる各駅停車と消えた初恋の謎」

──『山手線探偵』では描かれていない駅がまだありますが3巻で完結していますよね。続編の可能性はないのでしょうか。

じつはもっと書いてほしいと言われていたんですよ。でもシホちゃんがどんどん成長しちゃうからなぁ(笑)。1巻ごとにシホちゃんの学年も上げていたので、次だと中学生になってしまうんですよね。この話は、小学生だからこその言葉や考え方で物語が進んでいくのが良かったんじゃないかなと思うんです。

──今後、こういう作品を書きたいというテーマなどはありますか。

ネタは常に探しています。「鉄道ファンが事件に巻き込まれる話」だったりとかね。
テーマではないですが、僕は『死亡フラグが立ちました!』でデビューして以降、ブラックユーモアと言われるミステリをずっと書いてきたんですが、もっと重厚な作風のものもこれからは書きたいと思っています。
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■3巻「まわる各駅停車と消えた妖精の謎」

 

──冒頭のシーンは七尾先生特有のブラックを漂わせていますが、他の作品とは一風変わったホワイトな本作。思わず途中下車したくなる、「山手線の旅」的な楽しみ方もできます。
山手線に乗りながら良質のミステリで謎解きをしましょう。

 

七尾先生、ありがとうございました。
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( 取材・文 / 荒木みか )

 

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