【中国撮り鉄奇行⑤】幻の日本型気動車

中国・遼寧省の南票砿務局専用線は私が中国で回ったエリアの中でも、一番思い出に残っている場所です。

蒸気機関車もさることながら、もう一つ重要なモノがあったからです。

それは砿務局専用線の機務段(日本で言うところの機関区)にある古ぼけたボロボロの廃車体です。

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中国には満州鉄道時代に『あじあ号』で使われていたパシナ形蒸気機関車や、満鉄の気動車ジテ1形を電車化した101形など、戦前・戦中の日本や満州の鉄道史を検証する上で重要なものがたくさん残されています。

それらは中国各地の博物館に保存されたりしていますが、この南票鉱務局の廃車体は物置か何かに使われているのでしょうか、無造作に機務段の片隅に置かれていました。

 

しかし、一部マニアの間では知られていることですが、この廃車体、日本の鉄道史を語る上でも、とても重要なものなのです。

 

国鉄キハ40000形気動車。

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昭和初期に日本国有鉄道の前身である鉄道省が開発した気動車の生き残りなのです。

いや、残骸とも言えるこの状態ですから、もはや生き残っているとは言えないでしょう。

しかし、中国に現存する日本に関わりのある車両の中でも異端中の異端で、とても貴重なものなのです。

 

この廃車体は南票鉱務局が2000年代に入って、中国型蒸気機関車マニアに注目されるとともに、少しづつ話題となりはじめました。

最初は何の車体なのかわからず、インターネットの掲示板で議論がされましたが、その中の一人が資料を基に、形式を特定することに成功しました。

キハ40000形は1934年から製造され、山陽本線などで活躍しました。

約30両のうちの半数が戦時中に特別廃車となり、標準軌に改造されて中国大陸に送られ、華中鉄道で使用されとのことです。

 

なぜ華中鉄道で使用された車両が東北部である遼寧省の南票にあったのか、そのあたりの経緯は誰もわかりません。

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私も現地を訪問した時、砿務局の職員に経緯を聞きましたが、「日本型の車両である」という確認は取れたものの、どのような経緯で南票に来て、いつ廃車になったのか誰も知らず、調べることはできませんでした。

しかし、その過程を想像すれば想像するほど、波乱万丈な生涯であったことは予想できます。

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しかも、日本国内に同形式の現物はもう存在しません。

もし、この車体を日本に持ち帰れば、鉄道記念物になるくらい貴重なものでしょう。

このまま朽ち果てていくのはあまりにも惜しいと考えるのは私だけでしょうか。

 

 

文・写真/ぷぅやん

《ぷぅやん》
本名=神田勲。当サイトの管理人。幼少期から鉄道好きで、撮り鉄歴40年以上。プロカメラマン・編集者として活動しつつ、中国の現役蒸気機関車を追い続け、作品を YouTubeやDVDで発表。2016年5月、キャリアの集大成として当サイトを立ち上げた。

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