【海外】1994世界放浪の旅「リスボンの路面電車」

1994年2月24日、10ヵ月の放浪の第一歩となるポルトガル、リスボンに到着しました。

日本を出たのは2月22日、タップリと2日もかかったのはバンコクで世界周遊の航空券を購入したからでした。
バンコクを経由したのはもちろん予算を節約するためです。
1年のオープンジョー(往路と復路の発着地が片方、または両方別の空港となる航空券のこと)の航空券をバンコクの旅行会社で購入すれば、日本でチケットを手にするよりもずっと安価で購入できます。
バンコクから欧州~北米~そしてバンコクというチケットです。
基本的に南米やアフリカ行きにはこの手の周遊券には含まれておらず、オークランドの現金のみ受け付けというすごく怪しい──インド人が経営する──旅行代理店でブエノスアイレス行きを購入したことを覚えています。
(※アフリカへはジブラルタル海峡をフェリーで渡りました)

日本からバンコクは、ギリシャのオリンピック航空のオープンジョーを購入しました。
つまり、帰国するときもバンコクからになります。

ということで10カ月後、日本に戻る直前にも立ち寄ることになるタイは、この時、ホテルも取らずチケットを購入して、空港で過ごすという塩梅でした。

当時の僕はJALとANA、大韓航空とユナイテッド、そしてノースウェストとタイ航空しか使ったことがないアマちゃんで、離陸の際に勝手にシートがリクライニングになったり、食事の入ったカートが飛び出してきたりするオリンピック航空の機内で、この先の10カ月の放浪がどういうものになるか──覚悟をせざるを得ないような心細さを感じていました。

そのうえバンコクではドンムアン空港からエアポートタクシーを使うと、このドライバーは僕が告げた行き先でなく、自分の知り合いの旅行代理店に、僕と同行していた彼女(※現在の家内)を連れて行ってくれました。

マージンを取ってやろうという、今ならもう驚くこともない見え見えの魂胆に対し、小心者の僕はイライラを募らせる一方でした。

最終的に行先のすぐ近くで『この会社は今日は休みだ』という見えすいた嘘を言って、ドライバーは僕らを降ろしました。
それでもチケットを無事購入し、メーター・タクシーでドンムアンへ戻ると、料金はエアポートタクシーの1/3程度でした。

何時間かはもう忘れてしまいましたが、相当長いトランジット時間を終え、ロンドン経由で渡着したリスボン。
旅の第一歩が、この街からでなければ、タイの空気を引きずって、ビクビクした放浪になっていたかもしれません。

この日はロシオ広場近くの宿で12時間も眠ってしまいました。今ならどんなに疲れても、そんなに一気に眠ることはできません。長い時間、眠ることができるのも若さの特権でした。

翌日は昼からサンジョルジェ城へ向かいました。

リスボンは丘の街、細い路地、急勾配。
それなのに駐車している車がレールのようなモノを跨いで止っています。
いや、それはレールのようなものではなく、紛れもなくレールでした。
頭上には架線が張りめぐらされています。

「ここで路面電車が通るのか?」なんて思っていると、バルでカフェコンレイチを飲んでいたおじさんがいそいそと戻ってきて、車を移動させました。
直後に文字通りガタンゴトン、そしてキィキィと音を響きかせながら、エレクトリコと呼ばれる路面電車が石畳の路地を登ってくるではないですか!

EPSON MFP image

8メートルほどの小さな車体に台車が一つだけの2軸単車。
前後にグラグラと揺れるのも当然です。

写真でその傾斜は分かりづらいかもしれませんが、店舗の入り口と歩道を見れば路面電車が往来するにはいかに急な坂道かわかっていただけるでしょう。

それでもこの急勾配をゆっくりと力強く突き進む姿は、あとにも先にも自分の人生の中で、ポルトガルでしかお目にかかったことがありません。

EPSON MFP image

サンドジョルジュ城には、その路面電車の模型を売る露天商がいました。

残念ながら当時の写真はこのくらいしかありませんが、その12年後の2006年に再びリスボンを訪れた時の写真があります。

03 2006 01

奥に低床の新型車両があるのが見えますが、丘の上でライトアップされているのがサンジョルジュ城です。

04 2006 01

2006年当時も、このような古いチンチン電車が数多く残っていたリスボンですが、今はテージョ川を挟んだ南岸には最新のLRTも走っているようです。

それにしても1994年当時はホント、『チンチン電車』そのもの。

それはリスボンの街自体が動く電車博物館と言っても過言ではありませんでした。

 

文・写真/髙島学

《髙島学》
1995年よりフリーライターとして格闘技に携わり、格闘技専門誌で執筆。自らもMMAPLANET(http://mmaplanet.jp/)を立ち上げ、海外のMMAやブラジリアン柔術を国内に紹介している。仕事柄、海外に行くことも多く、その折に時間を見つけては路面電車やLRTにいそいそと乗車しているとか……。

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