【われら TETSU family】 file.8 玉川美沙(後編)

『ママ鉄パーソナリティー』
独占インタビュー(後編)

(前編はこちら)

01

「自分は社会のなかの一員だ」と、子どもも意識する

――『ママ鉄』であり子育て中である玉川さんにお聞きしておきたいことがあります。最近世間で、鉄道車内でベビーカーを使うor使わないで物議を醸すことがありますが、『ママ鉄』から見てどのようなお考えをお持ちですか。

自分はたまたま子供が好きなものが鉄道だったので、鉄道に興味を持ったのですが、鉄道は子どもとコミュニケーションをとるツールとしてとてもいいものだと思います。たとえば出かける時、車ではなくバスや電車を 使っていると、満員電車の中とかで息子がとても周りをよく見るようになるんです。語弊があるかもしれませんけど、自家用車にばかり乗っていると、つねに自分たちだけの空間じゃないですか。何をやってもOKということが生まれると思うんです。子どもを車に乗せた瞬間、行儀が悪くなったり……。それが電車とかバスのような公共の交通機関だと「自分は社会のなかの一員だ」と、子どもも意識するんです。

――社会との接し方を学べるんですね。

ベビーカーに関して言えば、私は使う側もその周りの側も、どちらも我慢するべきだし努力すべきだと思います。ベビーカーをたたんで電車に乗るのはすごく迷惑をかけるってわかってるんですけど、「その時間電車に乗らないといけない」ってなった場合しょうがないんですよ。それで大変なんだからってあきらめる必要はないんですよ。ただ、汗だくになるかもしれないし、大変かもしれないけど、できればベビーカーたたんで、抱っこして乗ったほうがいいとは思う。逆に、その苦労を社会がわかってあげて、場所をあけてあげるとか、よりかかる場所を譲ってあげるとか、どっちも譲り合うべきだと思います。

――お互いが気を遣うことが必要ということですね。

「“お願いします”って言いにくい」って言うお母さんがいますけど、言ってもいいはずなんです。恥ずかしいとか、声をかけにくいとかあるでしょうけど、それも周りがわかってあげられたらいいですよね。「大変なのに、声をかけられないだけなんじゃないのかな」とか……。日本人はお互いがお互いを思いやるがゆえに、人に気を遣いすぎるので、助ける方も遠慮をしちゃうんですよね。

電車とバス、ラジオの似ている点は『コミュニティ感』

――もっと気軽に声をかけあうほうがいいんですね。

でも、今の若い子はびっくりするくらい声かけてくれますよ。無言で席を立つとか、ベビーカーを持ってくれるとかよくあります。電車の中で助けてくれるのは若い子が多いですが、バスはおじちゃんおばちゃんですね。バスは電車よりもさらにコミュニティ感が強いからでしょうか。子どもとバスに乗っていると、本当によく助けてもらいます。そういえば鉄好きってバスも好きって人ぜったい多いですよ。

――どうしてなんでしょうか。

『コミュニティ感』でしょうか。電車とバス、それとラジオの似ている点って『コミュニティ感』だと思うんです。

――つまり玉川さんが鉄道を好きになるのは必然だったんですね。

そう思います。鉄道ネタはリスナーに鉄好きさんがもともと多いっていうのもあったのですが、ラジオでちょっと言うと反応があったり、なぜか鉄話って鉄道にまったく興味ないリスナーでも楽しめるんですね。わけわかんなくても、ちょっと面白おかしくできるんです。

――車とはちょっと違いますよね。

違いますね。車好きも鉄好きも、どっちもお金をかける趣味ですけど、違いますよね。鉄好きって限りなく節約しながら大枚はたきますよね。青春18きっぷとか、交通費を削っているのに、お金を払ってホテルに泊まったり、グッズ買ったり……(笑)。でも車好きの人って「高級車を買いたい!」「ポルシェに何千万!」「改造費が!」って話だと思うんですよ。だから車メーカーにまとめてドンとお金を払う車好きに比べると、鉄好きはかなり経済を回していると思います。各地域でお金を落とす人たちですから(笑)。

――なるほど! 地域社会に均等にお金を落としますよね。

鉄道を子どもと楽しむ話は女性が入りやすい

07
鉄活をすることって、ものすごくメリットがあって、子育てだったり、地域への貢献だったり、いろんな知識、情報を得るとか、ものごとを調べて準備して実行する構成力がつくんです。どこに行きたいからどう行けばいいのかを調べて、どんなものが食べられるか、どれぐらい時間かかって、どれぐらいお金を使うのか、リサーチ力とプランニング力がつくんですよ。だから鉄道の旅とかは『子どもといっしょにやるべき遊びトップ3』には入ると思いますよ。車の旅とは違って荷物を持つし、車だと子どもがやることはないんです。

 

――子どもとの鉄道の旅は教育としてもいいんですね。

やりはじめて本当に思いました。たとえば私は息子に旅の途中でミッションを与えるんです。

――どんなミッションですか。

「いつも見てるものじゃないものをひとつ探しなさい。いままで見たことのない鉄道のなにかを見つけなさい」とかですね。

――なるほど。それは子どものモチベーションも上がりますね。玉川さんは子育てがとても上手ですね。

そうですか?(笑) たしかにこういう話をすると「そうやればいいのか」ってお母さん方に言ってもらえます。みなさんやりかたがわからなくて、ただ新幹線を見に行くとかおっしゃるんですよ。でも自分が興味ないとしょうがないですよね。こういう話は子育て本にも載っていませんし、親子向けの鉄道雑誌みたいなものもあるんですけれど、遊びをアレンジすることを教えてもらえる場所がなかなかないんですよね。

――子育て中のお母さんにはとても参考になる話だと思います。

みなさん意外と苦労しているようですが、鉄道を子どもと楽しむ話って、女性が入りやすい話だと思うんですよね。子どもに対してどうするっていうのは男性より女性のほうが得意だと思うんです。今の世の中ってお父さんが任されていたことをお母さんがやらなきゃいけないってことが多いと思うんですが、そういう人に使ってもらえるヒントはどんどん発信していきたいと思っています。

――ママ鉄になる前の人に、どう鉄道を楽しめばいいかヒントを発信する。

06

ママ友とかに「今度サンライズ乗るんだ」って言うと、「よくそんなちっちゃい子と一緒で遠くまで行けるね」って言われるんです。私は息子が2歳とか3歳のころから一緒に行ってたのに(笑)。「困らないの?」って聞かれるんですけれど、困るのは当たり前で、「それでOKじゃないの?」って思います。困る旅をいかに困らなくするかじゃないですか。いかに困りながら、それをおもしろがってできるかが重要なんです。

――今は「面倒なことになりそうならやらない」って風潮が強いですもんね。

人に対する配慮とか、「迷惑がかかることは最初からやらない」とか。子どもなんだから、迷惑がかかるのはあたりまえで、かかったときに親がどうするかが問題ですよね。それを子供にも見せるべきだと思うんです。親が謝っているのを見て、子どもも悪いことに気づいてくれるることもあるでしょう。でも車のなかで「うるさい!」って叱っても、子どもはうるさいことを怒られているから、「なんでうるさいのがダメなのか?」ってところにはいかないんです。でも電車の中だと社会のルールまで理解させることができるんですよ。ママさんもそれに気づかれてる方は非常に多いんじゃないでしょうか。

――鉄道を通した子育て論。ありがとうございました。

 

(インタビュー/神田勲 写真/岡安健一)

 

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