【路線紹介】遠州鉄道その①

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遠鉄(えんてつ)──遠州鉄道は浜松を南北に縦貫する17.8キロ、すべてが電化単線という地方鉄道だ。
とはいっても人口80万、名古屋に次ぎ東海地方で2番目に大きな都市部の起点となる新浜松駅の周囲には高層ビルが立ち並ぶ。
それでいて、終着駅となる西鹿島駅は山間部への入り口、駅周辺は住宅密集地でありながら──駅前のそば屋というまさにローカル色豊か風景が広がっている。
遠鉄のユニークさは西鹿島で接続している──第三セクター=天竜浜名湖鉄道のような本当の意味でのローカル線でもなく、また大都市とベッドタウンを結ぶ郊外電車という趣でもない。
言ってみればこの2つの性格を持ち合わせていることが、遠鉄の最大の特徴といえるだろう。
前述したように17.8キロの路線は、電化されているが全て単線だ。
そこに日中は2両編成、朝夕のラッシュ時には4両編成の全線直通の各駅停車が、朝7時代から夜の8時代まで実に12分単位=1時間で5本も走っている。
この間の18駅は無人駅も存在する一方で、全駅に自動券売機が導入され、タッチパネル式のナイスパスも併用されている。
改札の無い無人駅では車掌が定期や切符をチェック&回収する横で、ナイスパスをタッチパネルにかざして下りていく乗客の姿が見られる。
そして僅か32分の行程で車窓に広がる光景は、田園地帯から新興住宅地、古い町並みの市街地を経て、高層ビル群の中を潜る。
まるで緑から銀へのグラデーションで彩られているかのようだ。

今回は、そんなちょっとドラマチックでもある遠鉄のぶらり旅をより劇的に感じるためにも西鹿島駅から乗り込み、新浜松駅に向かってみたいと思う。

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新東名の浜松浜北インターを下り、国道152号線を北上し200メートルほど車を走らせて左折。
高速を出て、ものの3分もしないうちにまるでアルプスの少女ハイジに出てくるような、ややメルヘンチックな家を思わせる西鹿島駅に到着した。
駅舎への入り口の右手は──フィーダーといってよいのか──バス停があり、若いお母さんたちが集まっている。
左に入ると車4台分の有料パーキング、終日500円で車を止めておくことができる。駅窓口で車のナンバーを伝え、同時に新浜松まで片道470円の切符を購入した。
改札は下りが到着するまで通ることができず、地下道を通って駅の反対側に回ってみた。
遠鉄・西鹿島は相対式ホームの2面2線で、反対側に出るのとは別の地下道で結ばれている天竜浜名湖鉄道の方は単式ホームの1面1線だ。
両鉄道とも1067ミリの狭軌を使用しているが、北側に遠鉄の車両基地があるために2つの鉄道は結ばれていない。
ただし、北側でなく南側の土地を有効活用すれば、2つの鉄道の相互乗り入れは可能になる。もちろん、天竜浜名湖鉄道は非電化のため、文字通り相互に乗り入れるには遠鉄にディーゼル車が必要となる。

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 実際に掛川方面から天竜浜名湖鉄道からの乗り入れは、天竜市が浜松市に合併された2005年以降も議題にも上がっている模様だが、費用対効果が疑問視され実現に至っていない。
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車両基地には大きな前面ガラスと四角さが特徴の1000系や2000系に交じり混ざり、釣掛式も残る──1958年から製造開始された30系クハ80の顔も見える。
 
1000系を仲介人に、湘南型の前面形状を持つ30系クハ80と天竜浜名湖鉄道の気動車=TH2100系の短いホーム越し一瞬の出会いなど、この地域に住む人たちにとっては当たり前の光

景だろうが、ローカル鉄道好きには垂涎の一幕といえる。
時間が来た。
下り電車から小さな子どもたちが、駅で待っていた若いママさんたちのもとに笑顔で走り寄る。
子どもたちを見送った2名の保育士さんが、役目を終え手持無沙汰な状態になった手旗を下げ、1000系二両編成の各駅停車に戻っていく。さぁ、新浜松へ向かおう。

取材・文/陳瑞衛吉

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