【路線紹介】福井鉄道福武線・えちぜん鉄道三国芦原線 その③

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えちぜん鉄道L形電車=Ki-boが鷲塚針原方面から田原町駅にやってきた

16時02分、えちぜん鉄道にとって初の低床車両であるL形=ki-boは田原町駅を出て、すぐに大きく右折し、フェニックス通りに合流した。
車内は思った以上に静かで、かの姉妹は初めての路面電車なのか、その動きだしやカーブを走る時点で『スプラッシュマウンテンみたいだ』と大はしゃぎ。つまり、普段から乗り慣れた首都圏の電車と違って、明らかに揺れは感じるということか。それでも、Ki-boの乗り心地は快適だ。富山地鉄市内線の7000形などとは比較にならない、静かで軽快な走りと表現しても良いだろう。
田原町から5分ほどで市役所前に到着し、2人の女の子はお父さんに連れられ、まるで段差を気にすることなくスキップのような足取りでKi-boを下りていった。

そんな福鉄観光を終えた親子に見送られた直後、、足羽川に掛かる幸橋の手間でF1003=Fukuram第3編成とすれ違ったKi-boは併用軌道を武生に向かい、2つ目の電停である商工会議所前を過ぎて左へ曲がる。
ここからは鉄道線だ。まだ帰宅ラッシュには少し時間があるが、車内は春休みだというのに部活動帰りか──下校中の高校生たちを中心にそこそこの振るわいを見せていた。

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福鉄名物の雪シェルター

赤十字前を過ぎ、ここからが相互乗り入れによるダイヤ改正で、最大20分の時短を実現させた急行の本領発揮だ。スピードをあげ花堂を通過、続く停車駅ベル前を経て福鉄名物の雪よけシェルターのある浅水までは江端、清明、ハーモニーホールと3つの駅も通過する。ここからさらに駆け足感を増し、Ki-boは16時36分に西鯖江に到着した。
すぐに改札を抜け、来た路を戻るため福井駅まで切符を購入。古い民家が立ち並ぶなかに、ちょこんと佇むホームと駅舎。性格的には市街地線とインターアーバンの性格を持つLRTなのだろうが、どうにも横文字が似合うような風景ではない。そんな印象をより強くしたのが、15時53分──復路にやってきた急行列車600形だった。
名鉄車両の大量導入を機にかさ下げされたホームに無骨なステップが下がる。『よっこらしょ』という掛け声とともに年配の女性が車内へ。16時21分に市役所へ、30分に満たない小旅行はスピード感溢れるものだった。

1200形の内装、前後に運転台と運賃箱が設けられているワンマンカー

1200形の内装、前後に運転台と運賃箱が設けられているワンマンカー

というのも、ki-boと比べると元名古屋市交通局の1200形は揺れること、揺れること(笑)。もう40年も昔、ほとんど高架などなかった当時は大手私鉄でも、このような豪快な揺れを感じることができた。車内の様子はといえば、さすがにこの時間に福井へ北上する客はまばらで、途中の赤十時前で4人の中学生と思しき女の子たちがワイワイと乗り込んできたが、すぐに運転士さんから『逆方面ですよ』と声が掛かり、さらなる嬌声を挙げてステップを飛び下りて行った。

鉄道車両での併用軌道は、実際に車輌にその身を置いてみると、それほど違和感はない。なんせ当方、路面電車に乗りなれておらず、並行する建物に対する目線の高さは、低床車両のKi-boに乗っていた時と比較してずっと慣れているからだろう。
レトロな600形を市役所前まで下り、ヒゲ線で福井駅へ。反対側にあるホームには本来、地下道を通る必要があるのだが、この電停には駅員さんが常務しており、「面倒でしょう」と先導して軌道を横断、上り線へ連れて行ってくれた。
この緩さ。併用軌道では乗用車は原則として交差点以外で右折は許されていないが、危なくない距離を保って、いくらでも曲がっていく。「規則厳守!!」などと厳しいことを言うなかれ、この塩梅こそチンチン電車が福井の街に根付いている証拠だ。

すっかりと夜のとばりが下りたフェニックス通りに880形がやってきた

すっかりと夜のとばりが下りたフェニックス通りに880形がやってきた

そして名鉄時代のモ880形から、そのまま880形を名乗る普通列車はゆっくりゆっくりと進み、威風堂々(?)と大きく様変わりした駅前広場へ到着した。

福井駅「電停」。さらなる発展を願いたい

福井駅「電停」。さらなる発展を願いたい

悲願といっても良いJR福井駅が目の前に広がる2面2戦の停留所──しかし、本降りとなった雨を目の前にすると、この駅前広場はJR駅ビルまで最短距離となる中央の歩道にはルーフがなく、バス停を迂回するように大回りする必要があることに気付かされた。

えちぜん鉄道福井駅のホームの奥には車両置き場が設けられている

えちぜん鉄道福井駅のホームの奥には車両置き場が設けられている

反時計回りに大回りし、JRを抜けて福井県民いや福井・越前都市間の人々が複雑な想い抱く新幹線用の高架ホームを借用している──えちぜん鉄道、三国芦原線を利用し田原町まで戻った。

意外にも併用軌道では3駅目となる田原町が、三国芦原線だと5つ目となり、この間の4つの駅のうち2つが福井口、新福井と『福井』の名称を用いられるのが、単純に面白かった。日本鉄道史初となる異なった事業者による軌道と鉄道が相互乗り入れを始めた福井。路面電車と高架線の私鉄が走る街は──実は2016年度の都道府県別幸福度ランキングで1位を獲得している。

福鉄770形が停車中の横をえちぜん鉄道MC7000形が、福井駅へ向かう──田原駅

福鉄770形が停車中の横をえちぜん鉄道MC7000形が、福井駅へ向かう──田原駅

『ネガティブなことを書かない』と当サイト管理人のぷぅやんから釘を差され、やたらと執筆に時間を要してしまったのですが──、住みよい街をより良くするにはやはりヒゲ線でなく、このまま中央大通りを通ってフェニックス通りに戻るループ線の実現を声高に訴えたい。
というような〆とさせて頂こうと思っていたところ……あれから半年以上が過ぎ、福井県では県庁を中心としたもっと大きな範囲で循環線の実現可能性について調査を始めたという。まさにKi-bo Fukuram──『お年寄りや環境にやさしい街創り』、さすが幸福度ランキング1位の県だけのことはある。物質的な豊かさを追い求めているどうなるのか──福井に学ぶべきことは多い。

(取材・文 / 陳瑞衛吉)

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