【撮影秘話】森の熊さん

撮り鉄で方々に行っていると、行った先でいろいろな出会いがあります。

いろいろな生き物とも出会います。

中には厄介なものもいます。

注意しなくてはいけないのが蛇や蜂ですね。

 

今まで撮り鉄の最中に、かもしか、蛇、水牛など、いろんな動物に出会いました。

しかし、一番驚き、恐怖を感じたのは熊です。

 

8年ほど前の話になりますが、私は磐越西線の会津若松〜郡山間のとある場所で、583系の『あいづライナー』を待ち構えていました。無題単車で無理やり林道に乗り入れて、撮影ポイントの近くまで行きました。

車じゃ入り込めないようなところでも、単車なら何とか入り込めることがあります。

私は単車で林の中にわずかに道の痕跡のようなものがある所を慎重に進んでいました。

 

と、その時です。

薄暗いしげみの中から黒い何かが横切ったのです。

 

野良犬でしょうか?

 

……いや、あんな形をした犬は見たことがありません。

良く目を凝らして見ます。

 

イノシシでしょうか。

 

……でも、イノシシって豚に近い形だろうし、あんな動きしないはず。

さらに良く見ると、その黒い影は何かを探しているようでした。

まだ春も浅い時期だったのですが、冬眠から目覚めて食い物でも探しているのでしょうか。

 

「うわあああああああ!!!!」

 

私は恐怖で思わず声を上げてしまいました。

 

なんとそれは熊だったのです。

 

どうやらまだ子供らしいのですが、大きさはセント・バーナードくらいでしょうか。

真っ黒ですが美しい毛並みです。

しかも、よく見ると、まだ邪気を感じない、かわいい目をしています。

『森のくまさん』の歌に出てきそうなかわいい子熊でした。

 

私が単車のホーンを鳴らすと、音にびっくりしたらしく、遠くからこちらのようすを見ています。

 

私はビデオを撮ろうと、カメラを準備したのですが、あたふたと準備をしているうちに、子熊は森の中に消えていってしまいました。

 

それにしても子熊とは言え、予想以上にすばやい動きでした。

野生動物の俊敏性は人間の及ぶところではありません。

昔、極真空手のウイリー・ウイリアムスが素手で熊と闘ったという実録映画がありましたが、本物の熊の動きを生で見てしまうと、あの闘いも映画のフィクションとしか思えませんでした。

 

そして、そこで一つ、不安がよぎりました。

子熊がいたということは、母熊がいる可能性もあります。

 

しかし、そうこうしているうちに『あいづライナー』の通過時刻が迫っていました。

私は覚悟を決めて三脚を立て、『あいづライナー』を待ちました。

 

『あいづライナー』が来るまでの間、母熊の存在を考えると、気が気ではありませんでした。

何しろ単車のホーンで子熊を脅かしてしまったのです。

 

母熊が報復にやってくるかもしれません。

『あいづライナー』を待っている間、ちょっとした風で「ガサガサ……」という音がすると、心臓が止まるような緊張を強いられました。

 

数分後、何事もなく『あいづライナー』は通過しました。05それにしてもあの子熊、こんな所をウロウロしていて列車に轢かれることは無いんでしょうか?

 

そんなことを考えつつも、母熊の報復を恐れた私は、その場から早々に退散しました。

その後も何度か同じ場所に撮影に行きましたが、あれ以来、子熊には会っていません。

 

 

執筆者:神田勲
《ぷぅやん》当サイトの管理人。撮り鉄一筋のキャリアは40年以上。2008年より中国に渡り、現役の蒸気機関車を追い続ける。その活動をYouTubeに投稿し続け、チャンネル登録者は約9000人を超えた(2016年5月現在)。その派生形として、当サイトを立ち上げた。

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